2013年09月16日

「白き鉄(かね)を鳴らして」 最終回 byこくまろ 特殊更新

現在、MGのサテライトキャノンは製造されていない。
弾の製造が国際法で禁止されているアトミックミサイルと異なり、
それは月さえ出ていれば衛星装置が月になくても、
何故か何度でも放てる上、HGですら驚異の破壊力を誇る。

HG至上主義を掲げる連中にとってそれはまさに、
MGに下克上を果たせる夢の産物だった。
だから、危険と知りながらも投棄されることはなかった。
今も、連邦の監視下の元、いつか現れる使い手を夢見て、
静かに眠っている。
永遠に眠らせておくべき悪魔なのだ。

だが今日この日、その揺りかごにオレンジの手が伸びた。

もうすぐ夕刻。既に雪はやみ、雲は去っている。
月は陽にも隠されず出ている。
万が一あれが敵の手に渡った場合、最悪、その時点で世界の勢力図が塗り替わる。
新たな波乱が生まれるだろう。
なんとしても阻止せねばならない。

俺がそいつに追いついたとき、
奴は定山渓の山奥にある倉庫を襲撃していた。
恐らく、此処に悪魔は眠っている。
この時点で、俺のザクのリミットオーバー状態の
タイムリミットは既に残り6分を切っていた。
これを過ぎるとどうなるのか、全くわからない。
つまり、制限時間は約5分と少し。

山の斜面に降り立った直後、ロックオン、2丁銃で牽制。
オレンジのグフは捜索の手を止める。
モノアイがこちらを向いた。うるさそうに、物理シールドを構えた。
しかし数度の弾を防いだところで、物理シールドが弾かれ、腕からおちた。

(グフの動きが鈍い・・・・・・!)

やはり不完全とはいえ、月光蝶の直撃をくらったのだ。
ただで済むはずがない。ならば、一気に畳み掛けるのみ。

俺は跳躍し、飛び蹴りを見舞った。
顔面にくらったグフはよろめき、しりもちをついた。
いけると確信する。今の奴の機動力は量産機に毛が生えた程度しかない。
距離を詰めて格闘に持ち込もうとする俺だったが、
グフは右手を前に突き出し、ウイップを伸ばしてきた!

咄嗟に避けきれず、俺は鞭に足を取られ、無様に転倒した。
山の斜面をごろごろと転がり、木々をなぎ倒してようやく止まる。
その横転により背中の翼に異常が発生、浮遊不可能と出た。
「もう飛ぶ必要はない・・・・・・!」
ためらわず、壊れた主翼を左右両方パージする。

そこへ、上空からグフがガトリングの雨を降らせてきた。
ザクのダブルシールドで防ぐも、威力は衰えておらず、左の腕が、
シールドごともっていかれる。俺のザクはたまらず片膝をついた。
ちぎられた白い腕が、足元にどさりと落下する。

目前にグフが着地する。俺はすかさず短銃を構える。
しかしそれより早い回し蹴りが右手に命中し、短銃を取り落としてしまう。
武器を失った俺の右手に、ガトリングの銃口が向けられた。

しかし、最後に残っていた切り札が、勝敗をわけた。
「最後に敵と認めてくれて・・・・・・ありがとよ。これは礼だ」
ザクの右掌が光った。
そこから発射されたパルマフィオキーナ掌部ビーム砲が、
グフのガトリングと、その左腕を粉々に粉砕した!
20130916_135805.jpg

無色透明のビーム砲がグフの左肩すらも溶かしたところで、
ぐらりと敵の機体が傾いた。
止めを・・・・・・と俺は息を吐いたが、ふ、とザクの動きが緩慢になる。
気づいた。制限時間を示すカウントダウンが、ストップしている事に。
故障ではなく、計測が終了している証。

俺のザクは、完全に動作を停止した。
だが敵はまだ動ける。勝負あったようだ。3度、俺は負けてしまった。

死を覚悟して目をつぶっていたが、何故か追撃はなかった。
それどころか、グフはよろめきながらも背を向け、大空へ飛び去っていく。

「・・・・・・おい、もしかして、引き分けたのか、俺は・・・・・・」
一騎打ちで、防衛目標を守りきったのだ。
勝利したと言ってもいいのではないだろうか。

いいや。俺は笑って首を横に振った。
此処まで奴を弱らせたからこそ勝てたことを忘れていた。
むしろむざむざ逃してしまったのでは、敗北に等しい。

俺はコックピットハッチを開けて外に出る。
山の夕暮れの寒々しい空気が、俺を包んだ。
基地の方からヘリの編隊が飛んでくる。全く、遅いぜ。

「でも、一矢は報いたんだ。ロマンは見せたぜ、少佐」

沈む夕日に向かって、一人、俺は満足に浸った。
白い俺のザクが、夕日を浴びて、あのグフのようにオレンジに染まっていた。

(了)
posted by 漢字中央警備システム at 20:29| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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