2013年09月16日

「白き鉄(かね)を鳴らして」 後編 byこくまろ 特殊更新

俺が札幌の時計台付近上空に着いたときには、既に戦場は移動していた。
雪の降る都市の一角、そのビルの麓に、
無残に転がるMG(マスターグレード)の∞ジャスティスの姿があった。
雪を被って白く色づき始めている。胸部のコックピットはひしゃげていた。
俺はごくりと唾を飲んだ。
最高性能クラスのMGガンダムが敗北を喫している事実は、衝撃以外の何物でもなかった。

少佐の手により陸路を輸送された俺の新生ザクは、札幌の郊外に隠され、
奴が現れるのを待った。
そして今朝、傍受した通信により、札幌市の北より飛来する未確認機の存在を知った。
「味方のガンダムに撃たれるなよ」
ザクに乗り、飛翔する俺に、少佐はそう告げた。
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非正規任務による単独行動。
これではあのグフと変わらない。連邦のガンダムに銃を向けられても文句が言えない。
だが幸いガンダム共は基地防衛任務のため市から離れることはない。
だから、俺は真っ先に行動し、奴が札幌市に侵入する前に決着をつける事にした。

正直、気分はかなり高揚していた。
寄せ集めのパーツで組まれたとはいえ、性能が飛躍的に向上したこの白いザクなら、
引けを取らない勝負が出来るという自信があった。

しかし、埋めることができなかったのは、パイロットである俺の腕の差だった。

一撃必殺を目論見、海上に居る間に接近し、
飛来するオレンジのグフに、俺は真正面からジオン製ビームシザースで
切り込んだのだ。

すれ違うだけの刹那。一瞬の後、俺の鎌が消えた。
俺は確実に奴の胴体を薙いだはずだった。
ところが、真っ二つにされたのは、俺の鎌の方だった。
折れた鎌の片割れは、無情にも海に落下し、しぶきをあげて沈んだ。

奴は俺にそれ以上構わず、加速をつけて去っていった。
俺は言葉を失った。主兵装だけを無力化し、追撃を気にすることなく背を向け
戦地へ向かうグフ。俺は敵どころか障害とすらみなされなかったのだ。

その後、俺はキサネ少佐と連絡をとり、帰還する旨を伝えた。
絶望的な力量差で悲観にくれていた俺は、一度作戦を練り直そうと思ったからだ。

そうして帰路につき、小樽周辺にまで戻ってきたとき、緊急の通信が入った。
「札幌基地から応援要請だ。お前も登録しておいた。今すぐ市へ向かってくれ」

応援要請・・・・・・?
主兵装を失った今、行ってもガンダム達の足手まといになるのは容易に想像できた。
されど、続く少佐の言葉は寒冷地の吹雪よりも俺を凍りつかせた。

「ガンダムタイプが2機やられた。現在周辺の戦力をかき集めて、残るガンダム2機を
支援する方針に転換した。急げ、もうロマンどころではない・・・っ!」
唇を噛むような、震える声。俺は胸に痛みを覚えつつ言った。
「わかった。要請に応じる」

市民の避難は終わっているはずだったが、
シェルターから出てきた人々が目下にまばらに見えた。
先ほど時計台の傍で見た∞ジャスティスに続き、テレビ塔の鉄骨に絡まるようにして
潰されているのは、MGのHi−νガンダムだ。こちらも、もう微動だにしない。
英雄と呼ばれたガンダム達の死骸を、市民たちは驚愕の目で見つめ続けていた。
とはいえ、俺もそれらを眺めているわけにはいかない。

戦場は南下していったようだった。
通信が飛び交い、黒煙があちこちから噴出していた。
やがて南区にある自衛隊の基地を最後の防衛戦として陣を敷き、
壮絶な死闘を繰り広げている現場に到着した。

助太刀に入ったMG達が死屍累々と広がる、散々たる有様だった。
敵の弾薬は無限かと思えた。
今基地の上空で戦っているのは、
恨み連なるグフと、連邦のMGガンダムの∀&ストライクフリーダム。
∀がビームサーベルで応戦し、ストフリが合間に射撃を行う。見事なコンビネーションだ。
地上からも、連邦の量産機達が援護射撃を放っていた。
俺も、それに加わりグフに向かってビームライフルショーティを撃ち始める。
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援護を始めて漸く、グフの性能を改めて観察することができた。
まず、装甲にPS(フェイズシフト)機能を備えているらしく、実弾の効果がまるでない。
俺が先ほど海上でビームシザースのみ破壊されたのも、それだけが脅威に見えたと推測する。
その上、エネルギーが枯渇する様子もないことから、核動力であることも間違いないだろう。
ガトリングの弾もビーム製だ。なるほど、Iフィールド持ちの∀が未だ健在な理由もそれか。

俺が到着して、わずか3分。早くも戦況が動いた。
またしてもわずかな隙をつかれ、ストフリが堕とされた。
グフのガンパレルがストフリのドラグーンをひとつ残らず撃ち落とした上で、だ。

直後、本部から通信が入った。最後の手段の通達だと、すぐにわかった。

「月光蝶を発動せよ」

撤退の指示もないまま、最後のガンダムに指令が下った。
俺たちが戸惑う中、その髭のガンダムは躊躇うことなく両腕を広げた。

月光蝶。それは、その場に居合わせた全ての動力エネルギーを奪う兵器である。
つまり敵味方見境なく、行動不能に陥らせる。
プリズムの羽を展開させたそれは、瞬く間に、基地を沈黙化させた。

俺たちの機体も全てダウンする中、無傷を誇っていたグフがついに地上に落とされた。
多くの犠牲を払いながらも、やっと勝利に手がかかったのだ。

だが、俺はふと気づいた。自分のザクのエネルギー残量が、空になっていないことに。
おかしい。この距離で月光蝶を浴びれば、エネルギーは枯渇していなくてはならない。
と、いうことは。

まずい、と思ったが、どうにもならなかった。
勝利を確信した∀も地上に降りたち、
グフに悠々と歩み寄り、四肢を切断し無力化させようと、
ビームサーベルを振り上げた、その次の瞬間。

グフがヒートホーンで髭の股間のコックピットをうち貫いていた。

敗因は思えば明らかだった。Iフィールド持ちとはいえ、∀も損傷が激しく、
月光蝶の動作が不完全だったのだ。

ぐらりと髭の機体が傾き、どさりと雪の上に倒れるホワイトドール。
代わりに立ち上がるオレンジのグフ。核動力がもう再稼働したのか。早すぎる。
低スペック動力の俺たちはまだ動けずにいた。基地も依然沈静化したままだ。

グフはこちらが戦闘続行不可能と判るや否や、バーニアを点火し、再び大空へ。

動けないこちらを見下ろしながら、グフは進路を南へ。

(畜生、また無様に生き残っちまったのか・・・・・・!)
複雑に絡まった感情が怒りに集約し、俺はコンソールを殴りつけた。

その途端、モニターに意味のわからない文字が浮かんだ。
【擬似スーパーモード発動します】
直後、がくんと機体が震え、エンジンが息を吹き返した。
「なんだ、何が起きている?」
全く理解できないが、胸部のカラータイマーらしき部分がまぐまの如く真っ赤に点灯し、
機体が自由を取り戻した。それどころか、通常より遥かに出力が上がっている。
【怒りエネルギー感知によりサブジェネレーター始動。タイムリミットは20分です】

(・・・・・・こんな機能が? 聞いてないがともかくチャンスだ、これなら追える!)
俺は気合を入れ、翼をはためかせ、全速力でグフを追跡した。
「3度目の正直、今度こそ一騎打ちで仕留める!」

悪運よ、最後までもってくれ。

(最終回へ続く)
posted by 漢字中央警備システム at 17:34| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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