2013年09月16日

「白き鉄(かね)を鳴らして」 前編 byこくまろ 特殊更新

20××年12月×日。わずかに雪が降る夜だった。
俺は連邦の部隊に所属しており、この日は催しのある横浜基地に
配置され、ザクUにて警備していた。
催し物といっても、各国要人の集まるサミットでも、新型機の発表でもない。
ただの博覧会に基地の一部を使っているだけなのだ。

それにも拘らず、規模が大きいというだけでガードにモビルスーツが駆り出された。
連邦の上の連中の懐にどれだけの金を差し入れたのかは知らないが、
MS見たさに集まる連中も多い。集客も兼ねさせているのは頭の悪い俺にもわかった。
見世物にされるだけなら別に構わない。俺自身が見られているわけではないし、
デモンストレーションを強要されているわけでもない。
棒立ちで良ければ好きなだけ見ていればいいさ。

しかし、日本の基地ではザクは珍しいらしく、意外と人が足元に集まった。
調子に乗ってポーズの一つでも取ろうとしゃがんだ途端、隊長機から
叱咤の声が飛んできた。まさか自分も見張られているとはな。
仕方なく、固定人形になる。サービス精神が泣いているぜ。

催しが順調にクライマックスを迎え、花火が打ち上げられた。
あっという間に式典も終わり、人々は帰路についていた。

一時間後には一般客も消え、スタッフによる撤収準備が始まった。
暇な時間を持て余し、操縦席でこっそりガムを噛んでいた、そのとき。
緊急の通信が俺の鼓動を跳ねさせた。

『緊急事態発生! 未確認飛行機体が高速で向かってきます!』

俺はため息をついた。もうすぐ仕事も終わるというのに。
そう愚痴りながらレーダーを見て、俺は眉をひそめた。

一機だ。しかもサイズはHG(ハイグレード)。
つまり俺たちMG(マスターグレード)サイズの三分の二ほどしかなく、
戦闘能力もMGより遥かに劣る。つまり、たとえ相手がガンダムタイプ
だったとしても、こちらは一個小隊。恐るるに足らない。

それにしても目的に見当がつかない。
催しも終わったこんな深夜に何の用だ。

『未確認機、通信不能! 敵機と断定、迎撃願います!』

その機体は太平洋を北上してきている。こちらは陸上型だから、
基地の端で待ち構えるしかない。
そう思ったとき、隊長から連絡が入る。

「カンシス1より各機へ。未確認機が射程に入り次第撃ち落とせ。
威嚇及び捕獲は不要だ」

・・・・・・相手の素性や目的もわからないのに撃墜しろだと?
俺は舌打ちして頭を掻いた。
どうやら、上層部か隊長は相手を知っているようだ。
厄介な事にならなければいいが・・・・・・。

配置につくと、既に敵機は目視出来る距離に迫っていた。
基地の強烈な明かりがやがてその機体を照らし始める。

上半身が鮮やかなオレンジ色をしていた。
ガンダムタイプじゃない。
あれは・・・・・・グフか?

と、思ったそのとき、隊長が叫んでいた。
「来るぞ!」

右隣でマシンガンを構えていた僚機が消えた。
鉄がひしゃげる音が遅れて聞こえた。
何だ、とそちらをみれば、僚機の頭部がなくなっていた。

そんな馬鹿な。俺は敵機に視線を戻した。
敵が射撃武装を構えた様子はない。
「準サイコミュ兵器だ! 弾幕を張れ!」
更に隊長が声を上げる。俺たちは一斉にマシンガンを撃った。
隊長はマシンガンを懸架し、バズーカを放った。

しかし、敵機はそれらを華麗と賞賛したくなるほどのステップで
交わし、あっという間に距離を詰めてきた。
その上、右手に装備したガトリングシールドが俺たちを襲う。

一体、また一体と味方が倒される。
不条理、という言葉が脳裏に浮かぶ。
闇夜に小型で高機動。それにパイロットの腕を加算すると、
HGの一機がMGの集団を潰せるというのか。
まるでサーカスのようなショーだ。いいやインチキだ。
そんな真似ができるのはガンダムタイプぐらいなものだ。

「接近武装用意! 格闘武器に切り替えろ!」
悪夢はとうとう基地に足をつけた。
漸く全身が露見した奴は、上半身こそオレンジのグフイグナイテッドだが、
脚は黒とグレーで塗装されたフライトタイプだった。
それにより、重装備と高機動を同時にもたらせているのだ。
おそらく、動力やフレームにも改造が施されているに違いない。

俺たちがヒートホークに持ち変える中、耳を劈く破砕音が背後から聞こえた。

何だ、と振り返らずカメラに後ろをうつしてみれば、
とある基地ビルの一角に巨大な鉄球が突き刺さっていた。

「ちっ・・・・・・やっこさん、どうやら目的は」

ぶつっ・・・・・・。

隊長からの通信が突然遮断した。
はっとしてみれば、隊長の機体が、敵機のグフの正面に立っていた。
違う。
グフが隊長に強襲をかけたのだ。
そして、そのコックピット部分に、右手のパイルバンカーを突き刺して。
ドン!ドン!ドン!
3連続でバンカーガンから弾が放たれる音がして、その都度隊長の機体が
上下に揺れた。その後、ぐったりとした隊長のザクを、
グフは振り払うように投げ捨てた。
隊長機は無残に転がり、黒煙を上げながら稼働を停止した。

強い・・・・・・。生半可な相手じゃない。
スペックが違いすぎる。
俺も仲間も、暫し攻撃を忘れ、敵を眺めてしまった。

すると、
敵のモノアイが、ゆるりとこちらを向いた。
ぎくりとして、咄嗟に俺はヒートホークを投げ、その直後マシンガンを構えた。
グフは上体を逸らしただけでヒートホークを避けたあと、
オレンジ色のシールドを構えて俺の弾を防いだ。

撃つ。とにかく撃った。
その間、味方機からの通信が入る。
「カンシス2から各機へ! 本部より撤退命令が入った! 
 カンシス5、攻撃を中止しろ!」
その声は副隊長のものだ。すぐさま残った4機の味方達が離れ始める。

それでも俺は射撃を止めなかった。止められなかった。
止めたらやられる。背を向けたら死ぬ。確定事項だ。
逆に、俺が此処で奴を足止めしておけば、他の連中は助かる。
そう思っていた。

俺が仲間を守っている。
そう思った。思っていた。だが、俺が撃ち、敵がシールドで
防いでいる間、何故か、味方の信号が一つ、また一つと消えた。

しまった、と俺は狼狽した。
敵の装備に準サイコミュ兵器があるのを失念していた。
背負っているガンパレルだ。
グフはシールドで俺の攻撃を防御しながら、前方位に攻撃できるのだ。
敵のパイロットの空間把握能力の高さに唖然とした。
あっけにとられたとき、運悪く、マシンガンの弾が尽きた。

俺の隙は、ほんの僅かだった。
その僅かな時間に、俺は背後から鉄球をもらった。
鉄球はワイヤーでつながれていたのだ。ビルに刺さった鉄球を
引っ張るだけで、俺はいともたやすく右足をもっていかれた。

俺のザクは無様に転倒した。衝撃に苦しみながらも前をみれば、
グフは死神のような冷たいモノアイとガトリングの銃口を向けた。

「や、やめろ、やめてくれ・・・・・・」
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ガトリングの雨が、俺のザクを砕いていった。

そして、俺の意識も、闇に消えた。

(中編につづく)
posted by 漢字中央警備システム at 01:22| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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